飯野賢治に感動してしまった

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飯野賢治氏が家庭用ゲーム業界にカムバック! Wiiウェアきみとぼくと立体。』を発表、配信
3月30日17時28分配信 ファミ通.com


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写真:ファミ通.com
●ゲーム業界の鬼才、飯野賢治氏の新作とは?

 飯野賢治がゲーム業界に帰ってきた。

 2009年3月26日、任天堂Wiiウェアの新作『きみとぼくと立体。』を発表。同時に配信がスタートした。このゲームの企画やディレクションを担当したのは、フロムイエロートゥーオレンジ(fyto)の飯野賢治氏。飯野氏と言えば、3DO用ソフト『Dの食卓』やサターン用ソフト『エネミー・ゼロ』などを開発したゲームクリエーターだ。とくに『Dの食卓』発売以降、ラジオやテレビなどに引っ張りだことなり、“時代の寵児”としてゲーム業界のみならず、多方面で活躍していた。しかし、`99年に発売された『Dの食卓2』を最後に家庭用ゲーム機の開発から離れ、それ以降、ゲーム業界で飯野氏の名前が出てくることはほとんどなかった。その飯野氏の約9年ぶりの家庭用ゲーム機タイトルとして発表、配信されたのが、『きみとぼくと立体。』というわけだ。そこで今回、アメリカで開催されたGDC09に参加していた飯野賢治氏に直撃取材を敢行。新作発表に至った経緯や空白の9年間について迫った。

――約9年ぶりの新作『きみとぼくと立体。』が発表され、発表と同時に配信がスタートしました。なぜ、家庭用ゲーム機の世界に戻ろうと思われたのでしょう?

飯野
 「WiiWiiリモコンが初めてベールを脱いだときの発表会の様子がストリーミング配信されているのを観ていて、「あっ、これで作りたい」という言葉のまえに、紙でコントローラー(Wiiリモコン)を作っちゃったんですよ」

――えっ、コントローラーを紙で?

飯野
 「紙を加工して(笑)。ふつうはそんなことしませんよね。このさきもないと思うのですが、そのときは作っちゃった。クラスにカワイイ転校生が来て、思わず似顔絵を描いちゃった、みたいな(笑)。似顔絵を描いちゃうくらい好きなら告白しよう! というノリで、Wiiで何かやってみたいなと思ったんです。それで任天堂さんとお会いしました。ふつうゲームは「こういうものが作りたい」という企画があって作り始めると思うんですが、今回はとにかく何か作りたい、と。(『Dの食卓2』以降)ゲームを作ろうといくつか案はあったのですが、初期段階で止めてしまったり、途中で僕が抜けてご迷惑をお掛けしてしまったりしたこともあり、当分のあいだ家庭用のゲームは作らないと思っていたんですが……コントローラーを作っちゃいましたから(笑)。」

――かなり直感的なものだったんですね。

飯野
 「そうですね。ただ、ゲーム業界から離れていたので、知り合いがいない。だから、知人にパイプ役をお願いして、任天堂さんと話をさせていただいたというのが始まりです。(任天堂の)担当者の方がすごくいい人で、いろいろテストをさせていただきました。最初はWiiリモコンを意識しすぎて納得がいくものができなかったんですが、テストのおかげで自分が作りたいものが見えてきて、やっと完成させることができました。」

――そこまでWiiに惚れ込んだ理由は何だったのでしょう?

飯野
 「ひとつは新しいデバイス。新しいことって何でもワクワクします
よね。ゲーム機ってどんどん変化しているようで、実際には大きな変化はなかったと思うんです。処理速度が増したり、描画能力が上がったり、表現面は飛躍したと思いますが。それがWiiの登場では、操作手段自体が変わりましたから。「作りたい」という言葉じゃなくて、コントローラーを作ったということが大事だったんですよ。従来のコントローラーの文化は任天堂さんが作ったもの。それを任天堂さん自らが捨てて新しいものにチャレンジする意気込みを感じた
からこそ、コントローラーを作るという行為に至ったと思うんです。……クラシックコントローラがあるのですべてを切り捨てているわけじゃありませんが。」

――すごく純粋に作りたいという欲求が生まれたということ?

飯野
 「そうそう。学生みたいでしょ(笑)。だから、「ゲーム業界に帰りたい」、「ゲームを作りたい」じゃなくて、「Wiiで何かを作りたい」という気持ちでした。任天堂さんと初めて会ったときは、ゲームの企画すらなかったですから。「純粋にWiiで何かを作りたいんです。テストさせてください!」と。いま思うと、そういう順序だったのがよかったのかもしれませんね。最初から企画を考えて作っていたら、あのコントローラーや任天堂さんのブランドに縛られていたかもしれませんから。」

――実際、そこまで惚れ込んだWiiで開発されてみていかがでしたか?

飯野
 「思ったよりクセがないなというのと、けっこういろいろなことができるなという感触がありますね。そう思うまではたいへんでしたが(笑)。あのコントローラーをどう使って、どう反応させるのかなどの基礎開発は、けっこう時間がかかりました。」

――本物のWiiリモコンを持ったファーストインプレッションは?

飯野
 「紙で作った物と違うなって。あと、大きさも間違ってた(笑)。発表されてからすぐに任天堂さんへ行ったので、興奮してましたね。Wiiリモコンに惚れ込んじゃってました。本当はもっと自分の内面から出てくる見えない欲求を形にしていこうと思わないといけないのに、惚れすぎちゃってまわりが見えなくなっていました。でも、いろいろとテストをしたおかげで落ち着いて、自分の作りたいものにかなり近づいた作品になったと思っています。」

――今回発表された『きみとぼくの立体。』はどんなゲームなのでしょう?

飯野
 「簡単に言うと、画面内に立体物があって、そこに人型のキャラクター“ニンゲ”を投げ入れて、立体物のバランスをとるという内容です。ニンゲはそれぞれAIを持っているので、落ちそうなニンゲを助けに行ったりもします。ただ、助けに行くことで立体物のバランスが崩れるので、バランスをとるために新たにニンゲを投げ入れる。1度投げ入れたニンゲは操作できないので、その行動を見ているだけでも楽しいと思いますよ。簡単ですし、新しいタイプのゲームなんじゃないかなと。AIや物理演算など、キーワードだけピックアップすると、じつはいまっぽいゲームだったりするんですが。そういった技術的なことよりも、ニンゲを投げたらもう触ることができない、という新しい感覚のほうを大事にしているゲームなんです。」

――ゲームの発想が生まれたのは、テストをくり返した結果なのでしょうか?

飯野
 「あるタイミングで突然、キューブに人がぶら下がっているという絵が思い浮かんだんです。それが最初ですね。テストをさせていただいたあとにそれが思い浮かんで、再度任天堂さんへ企画を持って行ったという感じですね。最初は投げ込むだけで、ニンゲのあわてる様子などを見ているというのも考えたんですが、もうちょっとゲーム的な要素も入れてみたというイメージです。」

――制作期間は?

飯野
 「1年前後ですかね。いろいろ新しいこともやっているので、基礎開発にどうしても時間がかかりました。オリジナルゲームなので、お手本になるゲームもありませんし。企画書を作っても、それだけじゃ伝わらない部分もいっぱいありますから。そのあたりはけっこう試行錯誤しましたね。」

――飯野さんと言えば、3DOドリームキャストなど、当時ハイスペックと呼ばれるゲーム機に向けてゲームを作っていた印象があります。

飯野
 「今回のゲームも、AI、物理演算、ゲームの進行とサウンドのシンクロなど、いろいろな新しいことはやっていますよ。ただ、僕の意思でそれを前面に出したくなかったんです。Wiiウェアなので、遊べばわかるゲームにしたかった
。そういう意味で、発表と配信が同時になったのもよかったです。ここがイイとか、こういうことがすごいというのを事前に並べ立ててもしょうがない。昔と見せかたも変わってきているということなんでしょうね。それにオンライン配信ですから、オンラインならではのことをやりたいなと。パッケージソフトのようにゲームのメッセージ性を、というよりプレイしてもらったほうが早いですから。」

――最近のゲーム業界を見ていて、アンチテーゼのようなものが?

飯野
 「まったくないですよ(笑)。ただ、クリエーターとしてではなく、いちプレイヤーとしての僕もいて、そういう視点から見ると、操作を覚えるだけで時間がかかるゲームが増えている印象はありました。だから、誰でもプレイできるんだけど、奥が深い、というものを作りたかったのはありますね。」

――3DOやサターン、ドリームキャストなどでソフトを開発されていた飯野さんが任天堂ハードで、というのは非常に驚きました。

**********************以下感動したところ***********************

飯野
 「僕も驚いてます(笑)。任天堂さんには『マリオ』や『ゼルダ』のような王道的タイトルがありますから、僕はその端っこで好きなものを作らせていただいたという感じですけどね。おかげで、世界のどこにもない、ユニークな作品にはなったと思います。今回思ったのは、何かに似せて作らなければ、ユニークな作品になるのかなって。「あのマンガのような、あのゲームのようなテイストに」と、作り終わるまで言わなければ、ユニークなものになるんだなと。最初は、「ユニークなものを作ろう」と思っていたのですが、それではダメだなと気づいたんです。お手本になるものがないものは必然的に個性的でユニークになる
のかなと。このゲームが持っている湿度だったり、温度だったり、頭に描いているものを形にするだけ。最終的にはいい形になったかなと思っています。」

**********************以上感動したところ***********************

――ゲーム業界から離れていたからこそできたゲームと言えそうですね。

飯野
 「それは大きいかもしれませんね。3DOで『Dの食卓』を作り始めたころも同じような気持ちでした。どうしても作品を重ねると、客観性が薄れ、視野が狭くなっていきますから(笑)。」

――ロックバンドみたいな感じですね(笑)。

飯野
 「確かに似ているかもしれません。1枚目のCDはいいけど、2枚目以降は、印税や音楽性の話になっちゃって、みたいな(笑)。ゲームは商品性と作家性が両立できるものだと思っているので、どちらかに偏ってしまうとダメなんだと思うんです。商品性に偏って、続編や移植が増えているので、そうじゃないものを作りたいという気持ちはありました。いまはゲームの作家性も高まってきているので、バランスもよくなってきているとは思いますが、(『Dの食卓』などを発売した)当時は僕以外誰もメディアに出てませんでしたよね。」

――久しぶりにゲームを作られていかがでしたか?

飯野
 「僕自身の作りかたは変わってないので、ブランクはあまり気にしていませんでしたね。でも、やはり気持ち的には、もう1回デビューする感覚ではありました。そういう意味で任天堂さんとやらせていただいたのは大きかった。任天堂さんのブランドで発売されているというだけでも、最低限のおもしろさは保証されていると伝わるわけですから。あとは自由にできる。だけど、僕が任天堂さんのゲームを……いまだに不思議な感じがします(笑)。」

――つぎの作品も気になるところですが、次回作もWiiで?

飯野
 「いまの時点で本当にノープランなんです。作り終わって、また作りたいなという気持ちはあります。そう思えただけでいいかなと。作り終わったら、もう二度と作りたくないと思うんじゃないかなと心配はあったんです。ゲーム作りは、人によって合う合わないがはっきりとしますからね。だけど、今回はたいへんさも含めて、やってよかったと思えますし、作り続けたいとも思えました。」

――任天堂さんのハード以外でも声がかかえれば、作ろうと?

飯野
 「声がかからないと思いますよ(笑)。でも、また任天堂さんとやりたいなぁ。まだ恋愛中(笑)。広報や営業の方とも仲よくなりましたし。みんな、すごくいい人たちなんですよ。『きみとぼくと立体。』を心から愛してくれている。」

――ゲーム業界を離れていた約9年間のあいだ、どのような活動をされていたのでしょう?

飯野
 「コカ・コーラ自動販売機を作ったり、ドコモのブランド開発をやったり、温泉旅館の設計をやったり。お菓子の仕事とか、とにかくいろいろやっていました。」

――旅館ですか? かなりゲーム業界とはかけ離れた……。

飯野
 「だけど、感覚的にはゲームを作っているのと同じなんですよ。ゲームも特徴を持ったものじゃないと売れない。旅館も特徴を持たせて、お客さんに来ていただく。何より大事なのは、旅館に来てお客さんがどう感じてくれるか、ですからね。そういう意味でもゲームと似ていると思いますよ。ハードが旅館になっただけ(笑)。」

――なるほど(笑)。そういう意味で、今回の作品に対するユーザーの反応も楽しみですね。

飯野
 「毎日、ブログを検索しちゃいそうですね(笑)。配信が始まっていますから、もうすでにいろいろな人がいろいろなところで感想を書いているんでしょうね。そこも昔のゲーム業界と比べて時代が変わったなと。まず無発表、情報ゼロでリリースするのは何気におもしろいし、買った人は僕のブログにメールしてもいいし、自分のブログに書いてもいいし。そうやって発表したものを共有できて、しかもクリエーターもいろいろ見るから、そういった繋がりかたは、当然僕にフィードバックされて、次回作に繋がるかもしれない。時代が変わるときって、いいようにも悪いようにも変わるんで、悪い方向に進まないように僕なりに捉えていかないといけない
。じゃないと作るのが嫌になったり、僕の個性がなくなったりしてしまいますからね。とはいえ、時代が変わったいまのユーザーやマーケット、メディアとのこういった関係は非常におもしろいですね。昔だったら考えられないですよ。」

――R35世代という言い方は失礼かもしれませんが、その世代にとって飯野さんが戻ってこられたのはすごくうれしいんじゃないかなと。

飯野
 「おっさんがカムバックしたんでね、おっさんたちには喜んでもらいたいですよね(笑)。いまの若いクリエーターとはもう感覚が違うでしょうから。けっこう意識はしてるんですけど。たとえば、今回ステージが選べるんですけど、最初から好きな難易度のレベルをプレイできる。昔の僕だったら間違いなく、ひとつのレベルをクリアしないと、つぎに進めないような作りにしていたと思うんです。でも今回は、どれでも好きなステージをどうぞ、と。これは最近のゲームクリエーターから学んで、「あぁ、そうすべきなんだ」と(笑)。そういう感覚は、がんばって若返ろうとはしていますよ。若い奴らから何かを学ぶ感覚ってけっこう好きなんですよ。楽しいし。ずっとゲームを作っていると、「これはこうしなきゃいけない」という自分の中での決まりごとがこびりついちゃっているんですよね。ひさしぶりにステージに戻ってきて、昔と同じ歌を歌っても意味がないし、何も楽しくないですから。自分だったらこうしていたのに、若いクリエーターはこうするのか。なるほどなって。若い人からどんどん吸収したいですね。」

――最後にユーザーの皆さんへメッセージをいただけますか?

飯野
 「『きみとぼくと立体。』を購入しようと思っている人にはとりあえずやってもらいたいですね。この作品は、音楽、世界観、操作性など、ユーザーが好きになる要素がポイントポイントにあると思います。だから好き嫌いはあるかもしれないけど、新しい感覚をぜひ味わってほしい。テストプレイをした人たちの反応もさまざまですし、何かしら感じてもらえたので安心しています。すでにプレイされている方は、ひとりプレイとふたりプレイで、ルールはちょっとだけ違うんですが、プレイの感覚はまったく違います。ふたりプレイのテーマは“協力しながら対戦”でしたので、ひとりプレイだけじゃなくぜひふたりプレイも遊んでみてください。それなりに深いゲームなので、慣れてくればまたゲームの魅力も増すし、がんばってプレイすれば何かいいことがあるかもしれません。たぶんプレイヤーが得られる感覚には大きくふたつあって、過去に感じたフィーリングが自分にあって、それより楽しいという“より”の感覚。もうひとつは、これまでになかったことを体験したときの感覚。『マリオカート』でずっと地面を走っていたのに、『ワイプアウト』になって空を飛んだときの感覚みたいなもの。そういう新しいフィーリングは、自分で操作する“ゲーム”というメディアだからこそ感じられるんです。そして今回のゲームは、“より”だけではなく、ニンゲを投げ込んだら触れられない距離感、投げ込むときの責任感、ニンゲどうしが助け合う姿を見たときの不思議な感覚。それらを大事にした作りになっていますし。新しいフィーリングやユニークな世界観が好き、という人にはぜひ遊んでもらいたいですね。“誰でも楽しめる”という任天堂さんの哲学と、“新しい何か”という僕の思想の、いいコラボレーションができた作品だと思います。」

※『きみとぼくと立体。』の公式サイト
http://www.nintendo.co.jp/wii/wiiware/wkbj/index.html
飯野賢治氏のブログはこちら
http://blog.neoteny.com/eno/