今日の気に入った内容

例によって怒られたら消します。
でも、お怒りになられましても、適当にやっているブログですので、消すのに時間がかかるかもしれません。
ご容赦を。

さて。以下引用です。


なぜ「飲みニケーション」重視の会社は儲からないか?

社内で「仲間」を増やすと、それ以上に足を引っ張る人が増える。

■あなたの組織が素早く動けない理由



「会議より飲み会に出たほうが、仕事に必要な情報を集めやすい」「中期計画なんて形だけつくるもので、現場では役に立たない」「事業部長は大まかな方針だけ打ち出せばいい。市場での具体的な方策は現場を知る部課長以下で考えるべきだ」

 社内を見渡したとき、誰でもいくつかは思い当たる言葉だろう。しかし、こういった傾向が強い組織には、ほぼ間違いなく、事業活動を進めるうえで望ましくない状況が起きている。



 日本企業が、急速に変化する製品市場にどう対応しているのかについて考察するため、2004年度から2年おきに大企業への質問票調査を実施してきた。日本の大企業は、ビジネスユニット(事業部などの組織単位)のミドルクラスが組織を動かし、市場への適応を担うことが多いため、調査はビジネスユニット単位で行っている。

 今年で3回目の調査によると、企業や業種を問わず、市場への適応を妨げる組織的な特性が存在することが明らかになってきた。事業活動から見た組織の劣化度合いを示すもので、私たちはこれを「組織の〈重さ〉」と呼んでいる。組織が重いほど、最終的に組織があげる成果に悪影響を及ぼすこともわかってきた。



 ここで言う「重い組織」は、新たな方策を立てて組織が一丸となって行動しようとすると多大な労力がかかったり、結局何も変わらなかったりするような組織である。合理的な判断に基づいて迅速に動けない組織は市場の動きにうまく対応できない。

 とりわけ日本ではトップダウンより、ミドルクラスが事業にかかわる中核的な戦略を立案し、組織的に戦略を実行していく傾向が強いとされており、影響は決して小さくない。



 組織の〈重さ〉を構成する要因は大きく次の四つにまとめることができる。

 一つ目は、「過剰な『和』志向」である。組織が機能するには、適度な「和」は必要だが、過剰になると、一人でも反対意見が出れば議論がまとまらなくなるといった事態を招き、必要な議論すら敬遠されてしまう。また、変化を拒み、現状維持への志向が強くなる。

 二つ目は、「内向きの合意形成」である。製品市場でライバル企業よりも優位に立つには、顧客を重視し、ライバル企業の動向を注視しなければならない。ところが、組織内部の事情が優先されると、この最も重要な部分がおろそかになり、製品市場で有効な手段を講じることができなくなってしまう。

 三つ目は「フリーライド(ただ乗り)」だ。評論家のように口は出すけれど責任はとらない。チームの一員としてやるべき仕事であっても、どこか他人事のように考えている。こうした社員が多いと、組織を動かそうとすると多大な労力を必要とする。

 四つ目は「経営リテラシー(基本的な考え方)の不足」である。経営に関する基本的な考え方が理解できていない管理職が多いと、問題解決につながらない方策が打ち出されたり、誤って理解されたりして、的外れな方向に組織が動いてしまう。



 われわれは、これらの要素を前提とした質問項目から、組織の〈重さ〉を測定している。各組織で、〈重さ〉に相当差があるだけではなく、一つの企業の中に軽い組織と重い組織が共存している場合も少なくない。

 このほか、軽い組織では会議や正式な場における指示、報告など公式的な指揮・命令系統を通じたコミュニケーションが活発であるが、重い組織ほど、これら「タテ」の公式ルートではなく、インフォーマルなコミュニケーションを通じて仕事を進めようという力が常に働くことが明らかになった。



 たとえば、喫煙所や給湯室などでの会話を通じて補完しないと、仕事に必要な情報が十分に得られない。あるいは飲み会に参加した人だけが常に重要な情報を得ている──。このように、公式の会議やメールでは全体像がわからず、周辺から情報をかき集めてやっと合点がいくような組織ほど劣化が進み、きわめて重くなっているといえる。

 社内で個人的なネットワークや情報源が増えることは一見メリットに思える。しかし調査によると、実はそれ以上のデメリットがつきまとうという意外な結果が出た。



 図を見てほしい。組織内に知人の数が増えると業務を遂行するうえでの「支援者」数は確かに増える。ところが、業務遂行の際に説得、根回ししなければならない「説得者」の数はそれを上回る勢いで増えていくのだ。

 知り合いや顔見知りが多いと普通、目上の人や同僚からアドバイスや手助けを受けやすくなるだろう。しかし、そのような状況では、事前に話を通しておかねばならない「関係者」は、それ以上に増えていく。われわれの調査によれば、知人の数は組織の規模に比例して多くなる。つまり、知り合いが増えることは、単に個人的な知り合いが増えるというよりも、むしろ仕事のうえで関係がある人が社内に増えて、その結果、組織内部での調整に無駄に手間がかかってしまうことを意味するのだ。





■「現場力」だけでは変化についていけない



 それでは〈軽い〉組織をつくるにはどうすればよいのか。

 まずは、社内の各組織をコンパクトにすることだ。小さな組織では、情報伝達も早く、建設的な議論がしやすい。社員の顔と名前も一致しやすくなる。機動力がつき、一人一人が組織の一翼を担っているという意識が強くなり、他人事のような顔をする人が少なくなる。結果、組織内部の事情に振り回されることが減り、常に組織全体の視線が市場に向けられやすくなる。

 分析からは、一つのビジネスユニットの人数はできるだけ少なくすることが望ましいといえる。大企業であっても、個々の事業を担当する組織は、可能な限り規模を抑えるべきである。

 ただ、必ずしも少人数=コンパクトな組織とは限らない。人数が多くても、組織のピラミッドの形がフラットで上からの指令や情報が下に伝わる距離が短いほどコンパクトだといえる。



 このテーマに限らず、ミドルクラスが経営の基本的な考え方を学んでおくことが必要だ。現場で得る知恵や経験はもちろん大切だが、それだけでは変化に対応できない。いかなる状況でも、現状を把握し、次にどんな行動をとるべきか考える力が不可欠だが、基本的な理論・論理はその土台となる。実際、ごく基本的な経営戦略の考え方を知っていたら絶対にうまくいかないとわかる方策をあえてとり、失敗する状況をしばしば見聞きする。企業経営の基本的な理論・論理を日常業務とは別に学び、仕事に生かす姿勢が日本のミドルに欠け気味であることも、組織を重くする一因であろう。



 世界同時不況の影響を受けて、多くの日本企業の業績は急速に悪化したが、最新の調査でも、基本的な傾向は変わらない。外部状況が変わったからといって、組織はすぐには変わらないのだ。

 的確な対応策を素早く講じることができるのは、軽い組織である。重い組織には、極めて厳しい状況でも、組織に危機感が乏しい。少数の人々がどれだけ必死で立て直そうとしても、組織全体としての行動に簡単にはつながらないのだ。

                                                                                                        • -

一橋大学大学院商学研究科准教授

加藤俊彦

山下 諭=構成